しあわせ塾アカデミア
「オンデマンド・ギャラリー企画展」
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西安の旅 阿 南
三村昌弘
平成の三十年を振り返ってみますと、元年の春に母が亡くなり、平成二十年に父も母のもとへ旅立ちました。私にとって父母の亡くなったことが平成と言えば一番に思い出されます。
今、母が亡くなった齢を一つ過ぎて思うことは、母は72歳、父は93歳で亡くなったことから、私はその真ん中をとり83歳くらいまでは生きたいなと。しかし、そればかりは思い通りになりません。そこで一念発起して、まずは晩酌を断ち切る、次は早寝早起き今より頑張ろうと。もう一つの思い出は10年前の平成21年、父母の供養と、会社を辞めた時を期に四国遍路の旅に出ました。その途中で、ある方から「『0番札所』があるんよ」と、「0番」と問い直しました。0番札所とは中国・西安市の古刹青龍寺であると聞き、30前に北大路欣也さん主演の「空海」の映画を見たことを思い出しました。その映画のストーリーは、私にとって「空海」は宇宙人そのものであり、真言密教の伝持の八祖です。この映画を思い、空海ゆかりの青龍寺をお参りし、納経帳に0番の御朱印を頂きたくなり、旅行会社を訪ね歩きました。何故かと言えば、旅の行程に青龍寺のお参りが繰り込まれたツアーがなく、力会社数社を駆けずることとなり、ようやく1社見つけ当てた次第です。日程も決まり父母の供養と自分探し「空海に出会う旅」の西安の旅に出ました。
旅の1日目は関西空港から上海を経由、上空から眺めた西安の街は薄紫の桐の花があちらこちらに咲いていました。空港に到着すると、旅行会社の添乗員の金さんと運転手の王さんが出迎えてくれていました。2日目は終日、西安市内の観光。朝は西安城壁の見学と南城門から西城門まで輪タクで巡りました。
城壁をめぐる輪タク霾(つちぶ)れり
続いて玄奘三蔵法師ゆかりの大慈恩寺の大雁塔登楼を訪れました。さらに今回の旅での1番の目的の青龍寺参拝です。八重桜がまだ咲き残り、柳の青さが際立つ池の向こうに青龍寺は建っていました。空海が恵果阿闍梨より密教を伝授されたお寺の後には、標石がおかれており、直接触れて感無量でした。次に恵果空海記念堂を参拝、ついに念願の「仏前勤行次第」を唱題。目の前に不動明王像・空海像、奥に恵果像を拝し唱題を唱え始めると、道教の坊守が備えてある鐘を撞いてお勤めを手伝ってくれました。
八重桜読経むせぶ青龍寺
お参りを済ませ、納経帳の拝受所を訪ね執務官より御朱印を頂き、西安旅行の目的が8割は達成されたと安堵した次第です。夕暮れの迫る頃に、チューリップの咲く阿倍仲麻呂の所縁の興慶宮公園を訪れ、「あまの原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」この歌を漢詩の五言絶句の形で詠んだ記念碑を見ながら、この日の旅の行程を終えました。
西安の旅三日目、西安といえば兵馬俑一号・二号・三号坑(銅馬俑)と順に訪れ、第1発見者の楊志発さんから詳しい説明を受けて深く感動でした。引き続き秦の皇帝陵を眺めながら、近年に発掘された貴重な凱甲坑を見学しました。次に楊貴妃と玄宗皇帝のロマンの華清園(浴場の遺跡)。6000年前の湯殿遺跡・半坡遺跡博物館を巡り古代に夢を馳せました。夜は華麗な唐代の歌舞が楽しめる唐楽宮でディナーショーを観て堪能し、この日の行程を終えました。四日目、見学の日程はこの日が最後で、最初に訪れたところは高速道路をひたすら走り、三国志時代の最後の戦いの跡の五丈原(西安より西方150キロ)の諸葛泉(諸葛亮廟)遥かな昔を偲びました。次の訪問地は地下宮殿から出土された宝物で有名な法門寺です。お釈迦様の真身舎利の安置所をお参りしました。次の見学の場所へひたすら走り続けていましたが、途中に添乗員の金さんが立ち並ぶ露店の店を指差し、「あれがバザールよ」と、運転手の王さんは車を停めてくれました。金さんは素朴な人柄で花梨糖を買ってきて下さり、ほっと一息入れました。さらにひすら走り続けて、茂陵博物館(名将の雀去病お墓)にやっと到着です。茂陵は漢代唐代の文化発祥の地で、近辺には貴重な遺跡が点在しているそうです。この茂陵博物館で一番印象深かったのは、日本にあるキトラ古墳・高松塚古墳に描かれている四神「東(青龍)西(白虎)南(朱雀)北(玄武)」が、茂陵の廟には5000年以上前から描かれていると聞かされ、やはり日本とは歴史の起源が数段、いやもっと違うと実感しました。翌日の帰りの行程を入れて5日間の西安の旅(空海に出会う旅)私なりに思うのは、空海はやはり宇宙人であって、中国は悠久の歴史を誇り、真言密教の伝授の恵果阿闍梨が西南にいたことを熟知したうえで、空海は中国に渡り、恵果阿闍梨より真言密教を伝授されたものと感銘し、有意義な5日間の旅の帰路につきました。
大慈恩寺(だいじおんじ)・興慶宮(こうけいきゅう)・凱甲坑(がいこうこう)・半坡遺跡(はんぱい)・諸葛亮廟(りょうびょう)・真身舎利(しんしん)・茂陵(もりょう)